ALC ビル 塗替え エレクトロレトロレトリック 檻の中 忍者ブログ
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エレクトロレトロレトリック
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Title : 檻の中
 久方振りに街に出てみると、電気鉄道は中津で折り返すという。車内放送を耳に窓の外を見れば駅舎南側に在る資材置き場が物々しく、十重二十重に鉄条網や廃材の囲いで覆われた一角が出来上がっていた。
 吊革に掴まり乍ら、同じく吊革に捕まる隣の話に耳を傾ければ、如何やら反社会的な思想を持つ人々の集会場が出来たらしく、成る程見てみれば幾つかの掘立小屋からは炊事の煙が上がり、襤褸を着た男女が引切り無しに行き来する。
 彼らは迫害されて此処まで落ち延びてきたと言う者も居れば、否々彼らは淀川の橋脚を爆破する気だ、確かに其う聞いたと言う者も居る。暴力的な一団とは言え人の子であり、聞き容れられぬ主張を押し通すための手段であるのだろう。善良な人々の暮らしを脅かして通る道理が有るものか、道理が通らぬから無理で押し通すのか、手段に理解は出来ぬにせよ、同情する可きか、恐怖する可きか、些か迷う。
 顔を見れば皆な誰もが穏やかで、何処にでも居るような男女の其れである。子供達も手毬をついたり追い駆け合いをしたり、犬猫も取り混ぜて生活が有る。其々に事情も有るのだろう。とは言え何が出来るでもなし、別の考え事を頭に巡らせかけた其の時であった。気が付けば、囲いの中に、一匹の大きな虎が居る。
 虎は悠然と囲いの中を歩き回り、中で暮らす人々も其れに気が付いているのかいないのか、全く気に留める風でもなく、皆な平常で己の仕事に精を出している。余りにも誰もが気に留めぬので、彼れはもしや飼われている虎なのかとも思う。だが、子供も居る中で、彼のような猛獣を野放しで良いのか。興味を惹かれて見ていると、突然虎が一人の男の腕に噛み付いた。すわ大惨事と私は息を飲んだが、男は特に取り乱すでもなく、平然と鼻唄など歌い乍ら農作業をし、虎も俣た平然と男の胴体、足、首、と次々と飲み込み、男は鍬を振るい乍ら虎の胃の中へと消えてしまった。
 その後も虎はうろうろと歩き回り続け、時折思い出したように足を止めては、女子供の境無く、次々と人間を食った。人々は相変わらず朗らかで、日常の細々した事柄を片付けている。虎の鋭利な牙が肉に食い込み、血が噴出し、臓腑が引き出されても、まるで見えていないようで、笑顔を絶やさず、世間話などし乍ら一人ずつ順番に虎の胃の中に消えた。
 何とも不思議な話だが、合理的な説明も思いつかない。眼前の光景に首を傾げる内に電気鉄道は来た方向へと折り返し、其の後の顛末は分からず終い、見たものを疑うわけでもないが、何が何やら、何とも腑に落ちぬ話である。
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