ALC ビル 塗替え エレクトロレトロレトリック 待合室 忍者ブログ
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エレクトロレトロレトリック
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Title : 待合室
 母が診察券と保険証を出すのを、見ている、私を、皆が見ている。
 誰かの名前が呼ばれ、名前を欲しがる人々の列は、足取りも軽く、不幸せを受け取る。切られた期限は、人を救わず、ただ従い、足並みは揃う。
 年老いた女が、しきりに訴えかけている。存在しない痛みについて。十四年前の一月十五日、ひどく寒い日、点滴の針が血管に届かずに皮膚が黄色く膨れたこと。水気の無い、かさついた肌を消毒すると、そこだけが十四年前に戻ったような錯覚に襲われる。痛みを感じる。看護師は手馴れた様子で女を宥め、すんなりと針を刺してしまった。点滴がぽつり、ぽつりと落ちて、管を流れていく。女は、それをじっと見ている、その間だけは静かで、痛みはなく、そこに存在していない。
 知っている。あの人も、あの人も、あの人も、みんな、知っている。それでも、私は、彼らを知らない。いつからここにいるのか、なぜここにいるのか、何ひとつ知らない。ただ、彼らがいる場所に、私もいて、並んでいる。ただそれだけのことだ。名前が呼ばれる度に、同じように顔を上げ、失望し、どこか安堵して、また沈黙を続ける。名前が呼ばれたとき、初めて彼の名前を知り、それっきり、二度と会うこともない。空いた席に誰かが座れば、もう顔も思い出せなず、名前も思い出せない。誰かの名前がまた呼ばれて、また顔を上げて、失望して、また俯く。いつか、私の名前が呼ばて、席を立つまでは、知っている。あの人も、あの人も、あの人も、みんな、知っている。
 私たちは、ここで顔を合わせることで、互いの無事を確認しあう。私は足が。私は胸が。頭が。腕が。喉が。目が。耳が。痛みがあるのは生きている証拠です。ええ、本当に、その通り。ああ、そういえば、最近めっきり顔を、見せなくなった、あの人は、ああ、本当ね、たぶんきっと、誰にも、見えなくなって、死んだわ。
 私もここから居なくなれば、誰にも見えなくなって、いつか名前が呼ばれたときに、名前だけが響き、皆が顔を上げ、私のことを思うだろうか。居なくなった私のことを、誰か、思うだろうか。
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