ALC ビル 塗替え エレクトロレトロレトリック 小田原 忍者ブログ
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Title : 小田原
 聞けば静岡と小田原は一続きの土地らしく、二駅間はものの半刻で行き来出来るらしいのだが、其んな馬鹿な話も有るまい。私の想像の静岡小田原間は、深山幽谷に隔てられた悪地悪路である。
 半刻での行き来は無理であろうと私が云うと、では其の目で確かめて御覧なさい、と云うので、連れ立って新幹線に乗り込んだ。名も知らぬ女である。造作が整い愛らしい。
 新幹線で女給が売る弁当は大層美味で、驚くほど柔い透明な樹脂製の水筒に入ったお茶の熱いのが、俣た堪らない。温度の無い惣菜と米の、味の抜けたような枯れた味わい、其の侘しさが旅の醍醐味である。
 新幹線は野を駆け山を駆け、東へと一路直走る。もう直き静岡であると放送が言うので降りる支度をしていると、静岡の駅は何やら蛇のような湾曲の構造で、高架線路は歪である。其の中を矢張り蛇のように、否、蛇の体内を滑るように胃の腑に至ると、新幹線は静かに車輪を止めた。丸い鼻が印象的な、青い車両は格好が良い。
 さあ、急ぎましょう。と女が急かすので、何事かと思うと、今から徒歩にて小田原に往き、此の車両に追い付いて見せると云うのである。私は仰天した。静岡の町は白く均一化された壁と藁葺きの街で、軒を連ねる土産物屋には、用途の知れぬ細工が並んでいる。近代化を中途半端に諦めたような意匠の、悲しげな空気が胸に痛く、居た堪れない気持ちに成った私は、早く此処から離れたいと感じた。女に袖を引かれ、暗い隧道に入っていく。
 隋道を抜けると其処は林で、深い谷川に沿って山路が続いている。遠くに鉄橋が見え、其処を新幹線が通った。新幹線はのたりのたりと蛞蝓のようである。
 何故此のような事に成るのかと問うと、女は事も無げに云った。時間と空間の流れは一定ではなく、湾曲する川の内と外では流れの速さも違う。全ては認識に始まるものであり、世の理は一つではないと。正直なところ、私は其れを鵜呑みにする程愚かではない。然れでも、再び潜った隧道の先に猥雑な町並みが現れ、灰色に薄汚れた小田原駅の看板を目の当たりにすれば、最早疑う余地も無いのであった。女は悪戯っぽく此方を覗き込んで笑い、私は俯いて赤面するばかりだった。
 此の旅は此処で終わりである。
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